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神戸大学文学部と附属学校との連携授業を行いました

 神戸大学と附属学校との連携授業も、今回で8回目となりました。
 今回は、文学部のご協力の下、平成25年10月12日(土)に瀧川記念学術交流会館において開催し、附属小学校5年生 から附属中等教育学校5年生までの希望者及び保護者約60人が大学の先生の授業を受けました。
 哲学・倫理学の中真生准教授には、「〈他者(たしゃ)〉ってなに?」というテーマで授業をしていただきました。哲学とは、あ る事柄について、論理的に筋道を立てて根本までとことん考え詰める学問であることが紹介され、哲学者レヴィナスの「他 者論」という思想を背景に「他者」についてお話しいただきました。例えば、病気やケガをしたときに、自分の意思に反して、 思うようにならない自分の体が「他者」となること、あるいは、人や出来事が自分の理解をまったく超えているとか、自分の力 が及ばないことが「他者」として感じられるということや、どんなときに「他者」が問題になるか、また、その予測できない「他 者」を無理やり理解しコントロールしようとすることで「他者」を同化し正当化しようとする私たちの生き方についてなど、普段 学校では習わない哲学的に考える視点・観点を教えていただきました。子どもたちは、自分にとっての「他者」とは何かを考 えながら、真剣なまなざしで授業を聞いていました。
 社会心理学・進化心理学の大坪庸介准教授には、「絆を科学する」というテーマで授業をしていただきました。人間の絆に は親子、恋人、夫婦、友達等の絆があること、動物にも絆があり、大学では遺伝子や脳から科学的に絆について考察するこ とについて紹介されました。また、絆は良いものだが信じて裏切られるかもしれないというコミットメント問題について、絆を試 す行動の例として、オマキザルが互いに指を相手の目に挿入することで絆を確かめ合うことを知り、子どもたちは驚いてい ました。授業ではアンケートが配られ、実際に自分たちが質問に答えて、絆の心理学実験に参加しました。アンケートの内 容は「友だちがバスに乗るまで一緒について行き、悩みを聞いてもらった」という場面で、友だちが悩みに気づいていたかど うか、さらに悩みが解決したかどうかという違いが設定されてあり、それぞれの場合で友だちにどれくらい親しみを感じるか という質問に答えるものでした。結果は、悩みが解決したかどうかではなく、友だちが悩みに気づいていたかが重要であり、 気づいていた方がより親しみを感じるという結果となり、友だちが自分に注意を払ってくれていると、その友だちとは強い絆 があると感じるということが分かりました。そして、よい人間関係をもっていると、私たちは幸せだと感じ、健康になるというこ とを知り、絆の大切さを実感しました。


中真生准教授の授業

大坪庸介准教授の授業


~授業を受けた児童生徒の感想~
●他者というのは、自分以外の関係がある事をいう事がわかりました。絆は色々な視点からできたもの
 というのがわかりました。また社会や理科や算数や国語や医学の事なども学びたいです。(小学校
 5年生)
●レヴィナスの他なるものは少し難しかったけれど奥底までつきつめて、よく分かりました。「絆を科学
 する」では脳のこと、人間とサルなどの違いなど、分かってよかったです。大学の授業はおもしろいな
 と思いました。(小学校6年生)
●他者のことをあまり詳しく気にしたことがなかったのでいい経験になりました。他者とは何かよくわかっ
 たので良かったと思います。また授業を受けたいなと思います。大坪先生の「絆を科学する」では、
 絆があることによって、いいのか悪いのかしっかり知ることができたので良かったと思います。(中等
 教育学校1年生)
●自分に当てはまる事があり、とても感情がのめり込んだ。少し難しかったが、これから生きていく中で
 役に立つと思う。参加型の授業がとても良いと思った。グラフや写真があり、イメージしやすかった。
 (中等教育学校2年生)
●哲学や心理学はどちらとも人間に大きく関わるものであり、より人間らしく生きていく上で必要となって
 くるものだと分かった。今日の授業で文学部にとても興味が湧いた。(中等教育学校3年生)
●文学部では哲学や心理学など難しそうなことを勉強しているのだなと思いました。でも今日の授業は
 それらについて分かりやすく説明していただいて内容も少し知ることができたし、身近に感じられまし
 た。(中等教育学校4年生)
●「絆」や「他者」など一見学問につながらないものでも、データや考察から考えを深めていけることが
 分かり、面白かったです。(中等教育学校5年生)



 授業後には、附属中等教育学校の生徒19人が、2つの見学コースに分かれ、文学部の研究室と図書館を見学しました。
 大坪庸介准教授の見学コースでは「心理学実験を体験してみよう」というテーマで、心理学実験室を訪れました。パソコン を使って、魚が何匹も動く映像をみて、人間はどの場所をどの程度見ているか、という眼球運動を測定する実験を体験しま した。アメリカ人は一点を集中して見る傾向があるのに対し、日本人は画面の背景など色々な部分を見る傾向がある、とい うことを教えていただき生徒たちは驚いていました。こういった実験がポスターや広告を作成する上で利用されていることも 知りました。
 河島真准教授の見学コースでは「江戸時代の古文書に触れてみよう」というテーマで、古文書室を訪れました。古文書は 劣化しないように中性紙の封筒に入れられ、中性紙箱に大切に保管されていることを知りました。また、江戸時代にくずし字 で書かれた古文書を実際に読んでみました。戦国時代の古文書には、豊臣秀吉のサインである花押(かおう)があり、それ を見た生徒たちからは歓声が上がりました。
 最後に、2コースが合流し、河島准教授の案内で、「大学図書館に潜入せよ」というテーマの下、人文科学図書館を見学し ました。図書館の本を持ち寄って皆で議論できるラーニングコモンズという神戸大学附属図書館では初となるスペースや、 附属学校とは規模が違う書庫や学生用のパソコンも見て回りました。生徒たちは、手動や電動の書架を実際に動かしてみ ることで、大学図書館の蔵書の多さを実感しました。
 いずれのコースも、附属中等教育学校の生徒にとって非常に貴重な体験となりました。


心理学実験室の様子

古文書室の様子

図書館(ラーニングコモンズ)の様子

図書館(書庫)の様子


~見学に参加した生徒の感想~

<大坪庸介准教授の見学コース>
●私は、「心理学」のことを、ただ心で考えていることを読んだり、マジックをしている時に、言い方に
 よってお客さんたちを騙したり、タネが分からないようにしたりする「心」に関することだけだと思って
 いたけれど、今回の見学で、パソコンの中の魚を見たりするだけで、「日本人」か「アメリカ人」かが
 分かる実験をして、「心理学」にもいろいろあるんだなぁということが分かって良かったです。(中等
 教育学校1年生)
●自分の目線が実際に目で確認できる技術は前から知っていたのですが、まさか自分が体験できると
 思っていなかったので嬉しかったです。人によって、一点をずっと見ている人とかあちこちを見て
 いる人など違いがあって面白いなと思いました。文学部でこのような理系のような実験が使われて
 いるのは意外でしたが、文学部に対する理解が深まったように思います。次に連携授業があるとき
 も是非行きたいです。(中等教育学校4年生)

<河島真准教授の見学コース>
●僕はあまり歴史が好きではありませんでした。何故なら、現代と昔との結びつきがあまり感じられなく
 て、身近に感じられなかったからです。でも、ずっと前に書かれた古文書を生で見て、内容には近くの
 地域のことも書いてあったり、あの豊臣秀吉の直筆サインを見たりして初めて歴史を身近に感じられ、
 興味を持つことができました。(中等教育学校1年生)
●古文書を生で見て、とても興味が沸きました!紙がとてもデリケートなので、扱う上での注意や約束事
 を聞いたり、特殊機器を見せていただいて、研究室の雰囲気をじっくり把握できたのがとても良かった
 と思います。古文書は何が書いてあるかぱっと見た感じではさっぱり分からなかったけれど、丁寧な
 解説をしていただき、くずし字を読み解く作業は楽しいと思いました。豊臣秀吉の花押にもテンション
 が上がりました。神戸大学文学部という進路も考えて、勉強を進めていきたいと思います。(中等教育
 学校5年生)


(附属学校部)